東京地方裁判所 平成5年(ワ)3061号 判決 1993年8月30日
フランス国
パリ 七五〇〇八、アベニュー・モンターニユ通り五四
原告
ルイヴイトン
右代表者
ダニエル・ピエット
右訴訟代理人弁護士
中野通明
東京都新宿区愛住町四丁目八番
愛住荘二〇二号室
被告
ベンジャミン・シュライサー
右同所
被告
瀧田稚子
右両名訴訟代理人弁護士
田中裕之
主文
一 被告らは、原告に対し、連帯して金一一〇〇万円及びこれに対する平成五年一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は被告らの負担とする。
四 この判決は、原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求
主文一項の「金一一〇〇万円」を「金一一二〇万円」とするほかは、主文一項と同旨。
第二 事案の概要
本件は、原告が被告らの商標権侵害行為又は不正競争防止法違反行為により被った損害として、被告らの得た利益の額相当分の損害二〇〇〇万円の内金八〇〇万円、信用毀損による無形損害二〇〇万円、弁護士費用一二〇万円の合計金一一二〇万円とこれに対する不法行為の後の日である平成五年一月一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
一 商標権侵害行為について
1 原告は、次の(一)ないし(三)の商標権(以下、(一)ないし(三)の商標権をまとめて「本件商標権」といい、その登録商標をそれぞれ「本件商標(一)ないし(三)」という。)を有する。(甲一ないし六)
(一) 商標登録番号 第一四一九八八三号
出願 昭和五一年二月四日
登録 昭和五五年六月二七日
更新登録 平成二年八月二九日
商品の区分 第二一類
指定商品 装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具
登録商標 別添商標公報(一)記載のとおり
(二) 商標登録番号 第一四四六七七三号
出願 昭和五一年一一月九日
登録 昭和五五年一二月二五日
更新登録 平成三年八月二九日
商品の区分 第二一類
指定商品 かばん類、その他本類に属する商品
登録商標 別添商標公報(二)記載のとおり
(三) 商標登録番号 第一九九五一二五号
出願 昭和五九年八月二一日
登録 昭和六二年一〇月二七日
商品の区分 第一三類
指定商品 洋食ナイフ、その他本類に属する商品
登録商標 別添商標公報(三)記載のとおり
2 被告らは、平成三年五月から同四年一一月までの間に、東京都台東区上野周辺の路上において、本件商標(一)ないし(三)に類似する標章を使用した偽ルイ・ヴィトンかばん、財布、キーケース、キーチェーンその他(以下「本件偽ルイ・ヴィトン商品」という。)を販売した。(争いがない。)
3 本件偽ルイ・ヴィトン商品は、本件商標権(一)ないし(三)の指定商品に含まれる。
4 被告らは、前記2の行為により、原告の業務上の信用を害した。(甲七、八)
二 不正競争防止法一条一項一号違反の行為について
1 原告は、かばん類、袋物等の製造販売を業とするフランス法人であるが、原告がその商品に使用している本件商標(一)ないし(三)は、遅くとも昭和五二年当初以降、世界の一流ブランド「ルイ・ヴィトン」として、わが国において極めて著名である。(甲一ないし八)
2 前記一2と同旨。
3 被告らは、故意又は過失により、本件偽ルイ・ヴィトン商品を仕入れて販売し、原告の商品との混同を生じさせ、原告の営業上の利益及び営業上の信用を害した。(甲七、八)
三 争点
1 原告が被告らの行為によって営業上の利益を害されたことにより被った損害の額(被告らが本件偽ルイ・ヴィトン商品を販売したことにより得た利益の額)
2 原告が被告らの行為によって業務上ないし営業上の信用を害されたことにより被った損害の額
第三 判断
一 争点1について
証拠(甲七、八)によれば、被告らは、平成三年五月から同四年一一月までの間に、共同して本件偽ルイ・ヴィトン商品を販売したことにより、少なくとも二〇〇〇万円を超える利益を得たことが認められる。
よって、原告が被告らの本件商標権侵害行為により被った損害の額は、少なくとも二〇〇〇万円を下ることはないものと認められる。(商標法三八条一項)
二 争点2について
証拠(甲七、八)によれば、被告らは、約一年半の長期間にわたり、原告の商品より品質が劣る偽ブランド商品であることを知りながら、本件偽ルイ・ヴィトン商品を原告の商品よりかなり安い値段で大量に販売し、これにより高級な一流ブランド商品である原告の商品の顧客に対するイメージを毀損し、原告の業務上の信用を害したものであることが認められ、右事実によれば、被告らの本件の商標権侵害行為により害された原告の業務上の信用は、これを金銭に評価すれば二〇〇万円を下ることはないものといわざるをえない。
三 本件に認定した諸事情に照せば、被告らの本件商標権侵害行為と相当因果関係に立つ弁護士費用は、一〇〇万円と認めるのが相当である。
なお、原告は、商標権に基づく請求と選択的に、不正競争防止法に基づいても損害賠償請求をしており、同法による損害賠償請求も認められることは前記第二認定の事実から明らかであるが、その損害の額が右に認定した損害の額を超えることを認めるに足りる証拠はない。
四 以上によれば、原告の請求は、前記一の損害二〇〇〇万円の内金八〇〇万円、前記二の損害二〇〇万円、及び、前記三の弁護士費用一〇〇万円の合計一一〇〇万円並びにこれに対する不法行為の後の日である平成五年一月一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余の請求は理由がない。
(裁判長裁判官 一宮和夫 裁判官 設樂隆一 裁判官 足立謙三)